冷飯は体も冷える
by huttonde
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ニートマスター ジョー 4
『新作発表会』
ニートマスター ジョー 4_c0072801_1119017.jpg

 表紙

1・2 秋の空にBAR Colourless の看板。
  ボ「♪ だーるまさんがーだーるまさんがー
 だーるまさんがーこーろんだ〜」
3・4 店前にボツが歩いてくる。
  ボ「♪ ひいじいさんがーひいじいさんがー
 ひいじいさんがー死んじゃった〜」
5・6 店内
  ボツ、僅かに開いたドアを指差し、
  ボ「♪ 小さい開きみーつけた〜、なんてネ」
  ジョ「いらっしゃいませ」
7 ボ「ただれた不快な季節を越えて、
 はるばる来ました近所から」
  ボツ着席。
  ジョ「ボツさん、ごぶさたでしたね」
8 ジョ「熱中症で死んだのかと思いましたよ」
 おしぼりと水を出す。
  ボ「夏は外出るのが苦痛でね。ジンフィズお願いね」

1 ボ「いや〜、ようやく涼しくなってホッとしたよ。
 もうフリチンやパンツ一丁からおさらばだネ」
2 ボ「ん? 涼しくなったのにホットした、か」 ププ
3 ジョ「楽しそうで何よりです」
  ボ「楽しくしてなきゃつらいのよ」真顔
4 ボ「も〜夏は暑いわ気だるいわ、
 鬱陶しくて気が滅入るからね。
 ほんとセーセーして一転ウキウキだよ」
  ジョ「夏嫌いがよく伝わりますよ」
5 ボ「ところが、しばらくすると
 今度は冬だよ。夏は暑かったくせに、
 冬は寒いってさ、ふざけてるよなあ。
 春と秋だけでいいのに、毎年嫌がらせしやがって、
 このクソ地球がさあ」イライラ
  ジョ「地球に文句言う人は珍しいですね」
6 ボ「今度生まれ変わるなら
 もっと上等な星にするネ、うん」
  ジョ「そんなお嘆きのボツさんに」
7 ジョ「落ち着いたこの季節ならではの
 梨と桃のカクテルを考えたんですが」
  ボ「オリジナル?」



8 ジョ「ポーランドのウオツカのズブロッカを 45ml、
 ライムジュース15ml入れて、
 すり潰した梨と桃とリンゴを適量でシェイク」
 チャンチキチャンチキ
9 ジョ「丸底のグラスに注いで、
 名付けて『秋の実り』」 出来上がり

1 ボ「ん〜、カクテルだから
 カタカナの方がいいんでない?」
  ジョ「・・・・じゃあ、アキノミノリ」
2 ボ「人名みたいだな。じゃなくて、
 英語にするとか洋風はどうよ」
  ジョ「桃はピーチで梨は・・・・」ん〜
3 ボ「リンゴはアップルで、梨は・・・・わからん」
  ジョ「ワカランですか」
4 ボ「違う違う、そうじゃ、そうじゃなーい、
 おちょくったの?」
  小「梨はペア ( pear ) 洋梨だな。
 日本の梨は幸水と豊水が有名だが、
 外国では大雑把に Asian pear 」
5 ボ「アジャペーか。アジャパーみたいだな
 ・・・・あれ!? ヤブさんいつのまに」
  小「たいした集中力だな」
6 小「おめえこそしばらく来なかったが
 死んでたのか?」
  ボ「まあ、当たらずとも遠からずってやつですよ」
7 ジョ「では、名付けて『アジャパーアップルピーチ』」
  ボ「オシャレ無くなったなあ」
8 ジョ「『アジャパーシーズン』。それっぽいでしょ」
  ボ「・・・・納得しましょう」

1 小「秋だからフォールシーズンてのは単純かい?」
  ジョ「あー、そっちがいいかも」
2 ボ「マスター、せっかくの名前を
 簡単に変えていいのか?」
  ジョ「名前はいくらでも出てくるから
 迷うんですよねぇ」
3 ボ「そこをバシッと決めるのがオリジナルカクテル
 ではないのかね!?」 カウンターどん!
  ジョ「だから決めたわけですよ!」カウンターどん!
4 ジョ「梨と桃とリンゴの甘みを強調しつつ、
 酸味の爽やかさで飽きがこない秋のカクテルです」
  小藪とボツが片手に持って、
  ボ「秋が来ないのか。じゃあ夏のもんだな」
5 ジョ「今、おちょくりました?」
  ボ「いえ、シャレです」
6 小「秋らしい爽やかさ、か。いいね」一口
  ボ「・・・・うん、うまい。プロみたい」
  ジョ「プロですけど」
7 小「このグラスもいいねぇ」 まん丸グラス
  ジョ「丸っこい方が果実っぽいかなと思いまして」
8 小「うん、これもいいし、
 首長の丸いワイングラスもありだな。
 果実を乗っけてるって感じでさ」
  ボ「グラスも種類多いから迷うねぇ」

1 小「マスター、まだ梨はあるの?
 一つくれないかな」
  ジョ「はい、どうぞ」
2 小「梨もリンゴも皮のまま
 かぶりつくのが一番だよ」 シャリシャリ
  ジョ「・・・・」
3 ボ「そういえばもう梨のチューハイも
 梨シェイクもあるし、
 甘々のデザートカクテルもありだよね」
  ジョ「カクテルはいくらでも出来るから
 迷うんですよねぇ」
4 ボ「そこをバシッと決めるのがオリジナルカクテル
 ではないのかね!?」 カウンターどん!
  ジョ「だから決めたわけですよ!」カウンターどん!
5 小「何か思いついても、先に誰かが
 考えていたりするもんだからな。
 カクテルはその最もたるもんだろうな」
  ボ「今はインターネットがあるからね。
 情報も膨大でパクりやすいし、
 パクってもわかんないよネ」
6 ジョ「ボクはパクったりしませんよ。
 オリジナルはちゃんと考えたものです」
  ボ「パクッていません、真似しましたじゃダメだよ」
7 ジョ「ボツさんも漫画のネタは大丈夫ですか?」
  ボ「失礼な、ボクは影響は受けても
 真似もパクりもしないネ」
8 ボ「おかげで一本考えるのに何ヶ月も
 かかっちゃうけどネ」はは
9 ボツ、急に無表情で止まる。

1 ジョ「・・・・ボツさん? ボツさん、どうしたの?」
2 ボ「・・・・あ、いや、先の事考えたら
 猛烈なウツが・・・・やだなあ、余計なこと
 考えさせないでよ〜」
  ジョ「も〜驚かさないでくださいよ。
 ここで死なれたら後始末面倒なんだから」
3・4 ボ「・・・・マスターは時々チクチク来るネ」
  小「なあマスター、カクテルにも
 花言葉みたいなもんがあるが、考えたかい?」
  ジョ「花言葉?」
5 小「ドライマティーニであれば知的な愛とか、
 ジントニックであれば強い意志とか、
 いつも希望を捨てない貴方へ、とかな」
  ボ「フォールシーズンは、秋の季節で梨で・・・・」
6 ボ「すっきりさわやか・・・・すかっとさわやか・・・・」
  ジョ「コーラみたいですね」
7 小「さっきのやり取りからあるんじゃねえか?」
  ボ「キーワード?」
8 ボ「夏が過ぎて・・・・セーセーした!解放感!」
  ジョ「フリチン、パンツ一丁」
9 ボ「・・・・それでいいの? カクテル言葉」
  ジョ「さっきのやり取りで覚えてました・・・・」

1 ジョ「実りの季節、収穫、充実、喜び・・・・」
  ボ「秋が来て嬉しい、時節到来、
 ウキウキワクワク・・・・」
2 ボ「ん? ウキウキワクワク、解放、喜び、
 この辺りいいんでない?」
  ジョ「じゃあ縮めて・・・・」
3 ジョ「解放と喜び、希望ってどうでしょう」
  ボ「ひゃ〜かっちょええ! それにしよう」
4 ジョ「BARカラーレスオリジナルカクテル、
 『フォールシーズン』、カクテル言葉は
 『解放と喜び、希望』」
  ボ「きゃ〜素敵〜!」
5 ボ「カラーレスオリジナルカクテルコレクションに
 また一つ名作が、てなわけだネ」
  ジョ「また一つ?」
6 ボ「今までもオリジナルあったんじゃないの?」
  ジョ「いいえ、あれば紹介しますよ」
7 ジョ「いちいち考えるのはめんどくさくて
 やってられませんよ」ははは
  ボ「そーいうことは黙ってた方がいいよっ」
8 ボ「よし、せっかくだからボクも
 オリジナルを考えよう!交代して!」

1・2 ボ「いらっしゃいませ。ヤブマスターボツです」
  ジョーと同じ格好。ジョーはボツの席。
  ジョ「ボクはお客ですね」
3 ボ「私が即興で考えた当店のオリジナルカクテルを
 御紹介致しましょう。冷蔵庫の中のもんとか
 使っていい?」
  ジョ「その分払って頂ければ」
4 ボ「秋といえば梨、りんご、桃、メロン、柿に
 ぶどうとありますが、梨メインはもう出たので
 ナシで、栗を使います」
  小「ほう」
  ジョ「能書きいいからさっさとやれよ!」
5 ボ「栗を使ったものといえば、
 マロンケーキってあるでしょ? モンブラン!
 ド忘れしてた。あの雰囲気をカクテルに
 しようと思ってネ」
  小「デザートカクテルかい?」
  ジョ「おい、マスター、まだか!」
6 ボ「ちょっと態度悪いよ、気をつけてネ」イラッ
  ジョ「すみません、久々に客の立場で
 つい気が緩んで・・・・」
7 ボ「客商売やってて、
 客になると態度悪いとはしどいネ」
  ジョ「なんとか我慢します」
8 ボ「我慢しなきゃいけないの!?」
  ジョ「違った、楽しみに待ってます」
10
1 ボ「栗リキュールを中心に、生クリームと
 ブランデーと栗きんとんと蜂蜜少々でシェイク」
 シャッキンシャッキン
  小「気になる音だね」
2 ボ「これにスライスした甘栗を乗せて、
 名付けて『モロ・マローン』」
3・4 小「なるほど、飲むモンブランで
 もろマロンか。いいんじゃねえか」
  ジョ「栗きんとんまで使うとは
 アイデアというか、そのまんまというか、
 ただ甘くて飽きそうですね」
5・6 小「もっと変なもん作るかと思ったが
 期待外れだったな」
  ジョ「ボツさんの漫画もオチが無いんでしょうね」
  ボ「オチが付いて良いもの悪いものあるの!」
7 ボ「なんだい、さっきから、
 ウソでももっとほめなさいよ!」
  小「いやいや、ほめてるよ」
  ジョ「同じく」
8 小「あ、そうだ、カクテル言葉はなんだい?」
  ボ「え? え〜と・・・・」
11
1 ボ「秋で栗で甘いケーキだから・・・・
 落ち着きとか癒しとか、満足かな」
  小「満足の後飽きるとかないよな」
  ジョ「甘える、飽きる、怠ける、だらける・・・・」
2 ボ「それはカクテルに言ってんの?
 それとも俺に言ってんの?」
  ジョ「いえ、ちょっと連想しただけです」
3 ボ「せっかくだからヤブさんもやってみたら?
 お手並み拝見としたいですネ」ブー
  ジョ「興味深いですね」
  小「俺は客だよ、飲む専門でいいよ」
4 ボ「酒でも理屈こくでしょう、いざとなったら
 逃げるんじゃハードボイルドに合わないんでないの?」
5・6 ジョー・ボツと同じ格好
  小「ヤブマスターコヤブです」
  ボ「よ、待ってました!」
7 小「甘いもの好きの方々に
 桃を使った甘々デザートカクテルをば」
  ジョ「そういえばヤブさんも
 柄になく甘いもん好きでしたね」
  ボ「よ、どーするどーする!」
8 ジョ「せかすの良くないんじゃないですか?」
  ボ「柄になくって失礼でないの?」
12
1 小「ピーチリキュールとピーチブランデーと
 ホワイトカカオリキュールと生クリームをシェイク」
 チャキチャキチャキチャキ
  ボ「そういえばヤブさん江戸っ子だっけ」
2 小「カクテルグラスに注いで、
 新鮮な桃の切り身を加える。
 名付けて、『プリンセス・ピーチ』」
3 ボ「ピーチ姫か。聞いたことあるな」
  ジョ「案の定、ゲームにもカクテルにも
 使われているようですね」
  スマホ検索
4 小「もとい、名付けて、『ピッチピチピーチ』。
 元気で可愛い感じだろ」
  ジョ「ビッチビチ?」
  ボ「蟹料理みたいだな。言いづらいし」
5 ボ「ヤブさんに似合わず淡いピンクがきれいだねえ」
  ジョ「柄に合わない乙女チックな色合いと
 組み合わせですね」
6 ボ「また柄に合わないって言ったろ!」
  ジョ「ボツさんも似合わないって言ったでしょ!」
7 ボ「うはは、桃のチョコ飲んでる感じだ」
  ジョ「歯が溶けそうな甘さですね」
8 ボ「でも、桃の実が甘いながらも
 すっきりさせてくれる感じかな、いいね」
  ジョ「ヤブさんにこんなセンスがあったとは
 驚きです」
13
1 ボ「さっきから、ほめてないんじゃない?」
  ジョ「すみません、正直過ぎたかもしれません」
2 ジョ「色といい味といい、
 女子供に受けるかもしれません」グッ
  小「ほんとにほめてる?」
3 ジョ「店側も客側も、適度なウソが大事」グッ
  ボ「だから、明かしちゃダメだってば」
4 小「厳しい夏を過ぎて、疲れた心と体を癒す
 デザートカクテルってなもんです」
  ボ「率直に評価しましょう」
  ジョ「ほんとに店のメニューに加えましょうか」
5 ボ「で、カクテル言葉は?」
  小「そうだねえ・・・・恵み、芳醇、
 まあ、喜びでいいんじゃないかな」
  ジョ「ボクの「解放・喜び・希望」と
 変わんないですね」
6 小「重なることもあるだろうよ、
 俺も夏より秋が好きなんでね」イラッ
  ボ「マスター、一言多いんだよ」
7・8 店の外・月夜
14
1・2 三人元に戻る。
  小「ま、三者三様ってことで面白かったね」
  ボ「みんな自作も考えるもんなんだね」
  ジョ「お二人が可愛らしいものを作るのは
 意外でしたよ」
3 青年、ドアを開けて顔を出す。
  青「こんばんは〜」
4 ボ「おー青年、久しぶり!」
  青「ごぶさたですね」
5 ジョ「さっきまでオリジナルカクテル
  発表会やってたんですよ」
  青「オリジナル?」
6 ボ「キミもどう? マスターになってさ」
  青「ボクが作るの?」
7・8 青年、ジョーと同じ格好でカウンター内。
  ボ「ほら、マスター、早くしろよ!」
  ジョ「プロがモタモタすんなよ!」
  青「プロのわけねえだろ・・・・」

                  終

FLY ME TO THE MOON, JAZZ BOSSA,
PIANO INSTRUMENTAL


by huttonde | 2016-09-25 11:20 | 漫画ねた | Comments(0)
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