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戦国物語 三
戦国物語 三_c0072801_64534.jpg
『足軽六蔵奮闘記』 三

出仕伺い

「捨てる神あれば拾う神ありか・・・・
あ〜、まだ決まってねえや・・・・」
 後日、六蔵は弥助に紹介された豊地(ほうち)城に向かった。
 豊地城は領内の東南、神保城方面から流れる大平野川の下流に
位置し、北と東の街道が交差する交通の要衝であり、広い田畑の
一方、宿場町もある栄えた地域だった。
 また、その東や西南にある城への後詰、支援の役割を
兼ねており、東南部の二大拠点となっていた。
そのため、東の敵方だった乙羽や南の古竹から狙われて
度々戦があった。
 城主は新里 兵部大丞(ひょうぶだいじょう)義正。遠縁でも
ある神保惟道によって積極果敢な戦働きを認められ、三十も
半ばの若さで、加増を兼ねて一帯を任されて間もなく、
彼を補佐する家臣達もほとんどが二十代から三十代と
若者揃いという。

 約束当日の四つ時(午前十時)前、
城外では弥助がいつもの笑顔で待っていた。
「我が城へようこそ」
 神保城下で会う時の気楽な着流しと違い、弥助は肩衣を着けた
小綺麗な格好で、幾分かしこまって見える。
「今はどこも人集めに熱心らしいすよ。こっちでも
頻繁に浪人が来て、門番とやり取りしてたし」
 六蔵は弥助の案内で城内の三の丸屋敷に向かい、
一室に通された。
 しばらく一人で待たされたが、やがて応対役の家臣と
祐筆(書記)役であろう若者の二人が入って来た。
 六蔵が平伏し、一人は上座、もう一人は
その傍の小机を前に座った。

「譜代家臣、峰口左京少進(さきょうしょうじょう)義道と
申す。近年は神保の拡大に伴い、当家への出仕願いも多い。
しかし当家も限りある故、来る者総てとはまいらぬ。
登用不可となっても悪く思わんでくれ」
 平伏する六蔵を見据えた峰口は、まだ老いには遠い、
口調もはっきりした若者だった。城側代表としての責任感
からか、威厳をもって接しているのがよくわかる。
 若い祐筆(書記)も六蔵を見ている。
「其の方については、弥助から紹介された。茅部、須田、永木と
来て弥助は当家に来たそうだな。弥助が感謝しておったぞ」
「は、弥助には苦労をかけました・・・・」
 弥助は明るく闊達で卑屈さがない。
 六蔵とは茅部家来以来の関わりで、六蔵同様にぼやくことは
あっても落ち込むことなく、常に前へ先へと進むような意欲を
持っている。
 その戦ぶりも、気迫をもって敵に対峙する姿は、やはり栄達
への欲なのか、一軍の将になっても進んで先鋒を受け持つで
あろうと想像できた。また、戦話を好み、兵法にも関心を
寄せていたから、彼なりに勉強もしていたのだろう。
 仕官が叶ったのは、まだ若く元気な弥助に、城主以下、
同じく若い彼らが共感して期待したのだろうか。



「須田方での活躍は当時も伝え聞いておる。対森柳乙羽の戦に
ついては、長年の鬱積を一気に晴らしたこと、当家でも語り草
となったものだ。同じ神保方として我らも奮起すべしと殿も
訓示しておられたわ」
「は、恐悦至極に存じます。あれは確かに我らもたまげまして、
十年二十年とかかると思いきや、まったく呆気なく、
我らも大喜びしました」
 ちょっと間抜けな言い草かなと思いつつ、
六蔵は当時の感慨を簡潔に伝えた。
 峰口は頷きつつ、
「しかし、一気に敵本城へ攻め入るなど一大決心といえよう。
やはり決着つけるべく須田様が決断されたのであろうか?」
「はぁ、それが、それまでも小競り合いが続いて、
じれったくなりまして、後に殿から色々と制約を受ける羽目に
なりました。やはり独断専行は家来としてまずかったようです」
「・・・・独断専行、と?」
 弥助もそこまでは話していないのか、
峰口の目つきが変わった。
(まあ、そうだよな・・・・)
と六蔵は思うものの、当時は須田の命令に納得が
行かなかった故の独断だった。
「本来は敵勢を敵領内深く追いやり、一角を占拠すべしとの
御命令でしたが、それまでの繰り返しでは返り討ちと、その後の
維持や対応が気がかりでした。そこで、一部占拠は放棄して、
敵本隊の追撃に集中しました。それが幸いしまして・・・・」
 必勝の根拠といえば、直感、というしかない。
「なればその意見具申は事前にすべきではないのか?」
 峰口の口調はやや責める調子になっている。独断専行、
つまりは軍令違反であり、命令に背く者など召し抱えるわけには
いかない。言い分によっては面会の中断もあり得る。が、
構わず六蔵は続けた。
「以前には戦のみならず領国の経営についても献策しましたが、
聞き入れられず上意下達のみとなってからは一切を割り切ること
に致しました。しかし、やはり戦となれば味方の損害を避け
つつ、勝ちに繋げねばなりません。故に現場を仕切る身と
なれば、言いなりで済ませるわけにも行かず、味方のため、
臨機応変の結果でございます。ですからまったく後悔はして
おらず、大勝したことは我が軍勢の誉れと考えております」
 命令違反で居直るような言い草だが、六蔵は本気だった。
「うむ・・・・その後しばらくして、其の方は弥助や他の者と
連れ立って須田家を出てしまったそうだな。
銭絡みで揉めたと聞いておる」
「は、左様にございます(おい弥助、
おめえはどこまでしゃべったんだ?)」
「理由(わけ)は?」
「え? はい、理由は・・・・家来は見返りを求めるものです。
一族ならまだしも、所詮は余所者でございます」
「うむ、離れたのは待遇の問題であるか」
「はい、周りの者も霞で腹は膨れません。その上雁字搦めでは、
怠けることも活躍も出来ません」
 六蔵は当時のことを思い出して苛立ちを覚え、
またも強気に述べた。
 峰口は無言で僅かに頷き、
「そのせいか知らぬが、須田勢はその後動きが鈍り、せっかくの
森柳乙羽の領土は、ほとんどを東南の須木江や古竹、屋久などに
取られてしまった。その後須田様は城主解任となっておる」
「は、聞き及んでおります」
「待遇、あるいは処遇というべきか、不備があったようだが、
当家で二の舞とはしたくない。有能な者への厚遇にやぶさかでは
ないが、やはり直接人となりを観る必要がある。人を見抜くなど
容易ではないからな」
「は、いかにも」
 ここは聴く側の資質が問われる場でもある。
立場、身分は目安にはなるが、人を観るには誤りやすい。
 これで格下と思って俺の評価を落とすのであれば、
峰口もその程度、と六蔵は決めている。
 六蔵もまた峰口を観ている。
 しかし、慎重で誠実そうな峰口に、六蔵は自身の立場も考えず
好感を持った。
 峰口は六蔵を見極めたいらしく、これまでの経緯や趣味嗜好、
戦に関わることや思想信条、最近の暮らしぶりなど、様々な
質問を繰り出してきた。無論、多くの質問は事前に決められた
ものだろう。
 肝心な場であるから、謙虚にすべきか、堂々と語るべきか、
性格で判断は分かれる。弥助も同様の多くの質問を受けたろう。
 奴のことだから、謙虚に控えめに、とはなるまい。
ここぞとばかり張ったりを利かせたかもしれない。
 弥助が適ったのであれば、同様の調子が望ましいかもしれない
が、やはり無理はできない。
(なぁに、斬られるわけでなし、慌てず焦らず
淡々と対応した方が自分らしくて無難だろうさ)
と決めている。
「軍学、兵法については誰かに学ばれたかな」
「は、茅部様の下で複数の方々から教えを受けまして、
あとはもっぱら実戦と独学で時が過ぎてしまいまして・・・・」
「その前の戸成家については?」
「はい、まだ十代の頃で家来程の役目もなく、雑用として
過ごしましたので・・・・城内での様々な方々と関わり、
それはそれで収穫でありました」
「うむ、茅部方でも須田方でも、足軽部隊の先鋒を務めるなど、
頼りにされたようだな」
「正確には少数の足軽のまとめ役でして、大戦(おおいくさ)
で人数を増やした際の、あくまでも名目上で、一時的な役割で
ございました」
「一時的? なぜだ」
「茅部様の頃は、まだ厳しい領国の内政に注力した時期でして、
殿の苦労も直接目の当たりにしておりましたので、我が俸禄に
ついては過分無用と辞退申し上げました。それ故、名字も無き
まま、その後も六蔵で通っております」
「なるほど、名については疑問に思っていたところだ。うむ、
合点が行った。では、足軽大将ではなく、足軽組頭といった
ところか?」
「は、常に戦ではありませんので、
普段はその立場で過ごしました」
「ふうん・・・・」
 峰口は納得したように頷いている。
 その後もこれまでの経緯を聞かれ、念入りに六蔵を試すような
一問一答も繰り返されて、それぞれに自分なりの意見を忌憚なく
申し述べた。
 しかし、実のところ、是が非でもという意欲は
六蔵にはない。
 この意識は若い頃より一貫したもので、故に気楽にもなれ、
事を成すには足を引っ張る。
 一長一短であり、自省して改めるべきか自問自答が何度も
あった。しかし、戦さ場での追い詰められた状況以外で必死には
なれず、諦観、無常、空虚といった無気力な意識が判断に影響を
及ぼした。
(不真面目か怠け者か・・・・)
 いつもそこで考えは止まった。
 これまでの経緯、意見の一端から峰口にその根本を
見抜かれたら、おそらく仕官は叶わないだろう。
 六蔵はまたも、
(それはそれで・・・・)
 と、いつもの考えに戻っている。
「我ら家臣が審議の上、適った者のみ殿の御前に御目通りし、
是非を仰ぐことになる。よって此度(こたび)は一旦帰宅し、
後日改めて登城されたい」
 と断ると、峰口は祐筆と共に部屋を出て行った。

 面会が終わり、六蔵が屋敷の玄関を出ると、陽は真上を
過ぎていて、玄関先では弥助が待っていた。
「結構かかりましたね。どうでしたか?」
 弥助は愉快そうな笑顔になっている。
「どうでしたかじゃねえよ、俺のこと
どこまで話したんだ? ヒヤヒヤしたぞ」
 弥助は嬉しそうに、
「いえいえ、ちゃんとほめときましたよ、
銭でもめたとかは言ったけど」
「・・・・審議があるってんで、また後日来てくれだと」
「でしょうね。次で殿にお目にかかって決まると思いますよ。
どうすか、これから城下の店で」
「酒か?」
「いえ、さすがに昼間はまずいんで、団子」
「ああ・・・・」
 互いに酒好きで団子好きである。
「大丈夫なのか?」
「ええ、六蔵殿を城外へお見送り致しまして、
しばし時が過ぎました由(よし)、という具合で」
「しっかりちゃっかりだな」

 二人は城下町の一角にある茶店に着くと、
店内の小さな座敷に座った。
 客は他に行商人らしき二人が、店先の長椅子に座って
茶をすすっている。
 弥助はすっかりくつろいだ調子で、
「いやぁ、上役にうるせぇのがいるんですよ。色んな奴がいる
だろうと覚悟はしてたけど、やっぱり直はきついですよねぇ」
「そうか・・・・じゃあやめとこうかな」
 六蔵は素っ気なく茶をすすった。
「いやいや、それは諦めないで下さいよ、それに頭がいた方が
家中の重しになって、こっちも安心できるし」
「重し?」
「あそこは若い奴が多いから、どうしても調子こきやすいん
ですよ。仕切ってんのは俺らだってね。まあ、そのせいか
その上役てのがまた、家中最年長の家臣筆頭で、やたら威張り
くさりやがって・・・・」
「左京(峰口)様ではないのか」
「その上です。左京様は二番手です。坂原大膳って奴・・・・
御方なんですがね、たしか四十二才で、殿は三十九、左京様は
三十五才です。そもそも出仕願いの応対もそいつがやるべき
なんですよ。それを面倒がって左京様にやらしてんでしょう。
小狡い奴ですよ」
「まあ、大所帯ともなれば、嫌な奴の一人や二人いるだろうな」
「しかも、言い分もすげぇんですよ。『家臣は酒飲むべからず、
酒は正気を失うきちがい水であり、御奉公の邪魔である』と」
「飲まずにきちがいか・・・・」
「他にも文武両道は二股であり、無能虚弱の逃げ道である、と」
「文武両道が逃げ道か・・・・へぇ〜」
 六蔵は呆れたような声を漏らした。
「つまり戦馬鹿になれってことかい?」
「この時勢で、戦働きが出来ない奴は家来の資格はない、
禄泥棒であり弁解無用、直ちに当家を離れるべし、と」
「おやまあ、それはすげえな」
 六蔵も呆れた、とでも言いそうな顔になっている。
「虚勢を張るというのか、あの隠岐守(永木)様どころじゃ
ねえんですよ、もっと徹底的な偏狭で傲慢でめんどくせえ奴
なんすよ。で、やっぱり何人か若いのが辞めてるそうです」
「それが味方はまずいな。足を引っ張る」
「ええ、辞めるべきはそいつですよねぇ」
 六蔵も同意した。
「殿よりちょい年上だし、しかも譜代てことで
殿も気ぃ遣ってんのかなあ」
「殿は神保家の遠縁だってな」
「そう、一門ですね。で、若くして戦で活躍してたってんで、
重要拠点のこの辺を任されたそうで、大膳は殿んとこで代々
ですからね。余計なもんが付いちまったもんですよ」
 弥助は嫌そうな顔で団子を頬張った。
「まあとにかく、仕官が決まりゃあ、また堂々頭に戻れる
でしょう。またよろしく御願い致します」
 弥助はおどけた調子で頭を下げた。
「うん、頑張ってみるかな・・・・」

 午後の城中、峰口と祐筆の吉池佐吉ら複数の家来が一室で
出仕願いに関する文書を整理をしていると、坂原がぶっきらぼう
に入って来て、峰口らは慌てて一礼した。
「左京(峰口)、報告が遅れておるな。どうしたのかと
心配したぞ」
「は、申し訳ございません、念入りに人物を観ようと・・・・」
「その日の結果はその日決められた時刻に報告せよと申したはず
だぞ。出仕願いが多いにも関わらず、一人にかかり過ぎで
あろう。戦であればなんとするか、もたもたせず、
もっと要領良くこなせ!」
 坂原が一喝した。
「申し訳ございません」
「お主は当家一の実務家として知られておる。俺も認めている。
やることは山とある。火急の用は戦だけではない、よく心得よ」
「は、よく肝に銘じましてございます」

 坂原大膳大進(たいぜんたいじょう)尚秀。
 齢四十二ながら、家中で最年長の譜代家臣筆頭で、
城主の新里よりも三つ年上になる。
 新里家の譜代家臣として数々の戦に活躍し、新里が豊地城に
加増転封されると、神保方豊地勢の総大将として近隣へ出陣
することもあった。
 顔浅黒く目つき鋭く、常に不機嫌そうな面持ちで、
城中をドカドカと歩く姿に、家中では密かに
「鬼頭(おにがしら)」と恐れられた。
 鬼頭とは、口うるさく怖い、家臣ほどではない組頭、
格下という意味で、もちろん蔑称だった。

 坂原を上座にして、峰口が改めて当日の面会記録を報告した。
 坂原は祐筆の手による関連文書に目を通し、
「この六蔵とはなんだ。元足軽大将とあるが、名字はどうした」
「ございません」
 峰口が答えた。
「足軽大将で名字が無いとはどういうことだ」
 坂原は怪訝な顔を示した。
「本来小勢のまとめ役でしたが、能力を認められ、大戦の際に
名目上大将として大軍を率いて活躍したようです」
「昇格ではないのか」
「茅部当時、城は禄高低く、殿の苦労を慮って辞退されたそう
です。その後の須田家についても、城主の須田様が元は同じ
茅部であり顔なじみということで、そのやり方で通した
そうです」
「ほう・・・・」
 坂原は文書をにらみ、しばらくすると、
「この六蔵なる者は森柳乙羽両家を潰したそうだが、
軍令違反による用兵はまことか」
「情況から作戦変更の必要を判断したとのこと」
「変更の際に総大将たる城主に報告も相談もないのか」
「・・・・戦では城主より策を授かり、それをもって陣代として
現場の総指揮を執る立場故、戦の最中ではその余裕が無かった
ものと思われます」
「総大将は城主であろう」
「は、その、戦さ場では六蔵が代役だったとのことで、
当家においての戦さ場での大膳様と同様の立場かと・・・・」
 不在の城主の代わりに家臣が戦を指揮するのは珍しくない。
 名字も無い百姓上がりの男が、時に大部隊を率いる足軽大将に
なり、更に独断で大戦果を上げたということに、坂原は驚くも
抵抗を感じたらしい。
「主君に絶対服従、忠義忠誠、御奉公、これが前提だ。
それも守れぬ輩に大事な役目と俸禄を与えるわけにはいかぬ」
「六蔵は戸成、茅部、須田、永木とその場所場所で忠義を持って
務めを果たし、貢献しております。特に非は無いと思われます
が・・・・」
「左京、軍令違反、独断専行に非がないとはどういうことだ、
その程度の判断も出来なかったのか!」
 またも坂原の怒声が飛んだ。周りの者は声も出せず
縮こまるばかりである。
「しかし、戦況に応じて大戦果を上げた事実に変わりは・・・・」
「策は須田様より授かると言っていたではないか。
ならばその手柄は須田様とすべきであろう」
「いや、ですから、戦は予定外がつきもので、
その策を六蔵独自に臨機応変に・・・・」
「黙れ左京!」
 こうなると坂原は聞く耳を持たない。
 六蔵への敵愾心に火が付いたのか、ことごとくを
否定し始めた。
「それ以前、戸成家においてはたった二年で飛び出し、茅部勢の
際には先鋒を任されながら敵の奇襲を防げず、作戦は失敗と
なり、須田家においては城主に逆らって勝手に軍勢を動かし、
更に他家へ移ってだらしなく借金暮らしを続け、主君への不忠、
不誠実は明白、待遇への不満もまた同様であり言語道断である。
齢五十を過ぎてその立場は、それまでの怠惰の結果であり、
その人格には重大な欠陥があると見なされるべきだろう。
謙虚さや無欲は無責任に通じ、左京への各返答は、凡庸、粗雑、
稚拙であり、何ら評価に及ばず・・・・」
 農民上がりの凡夫と見るが妥当と結論した。
 もはや全否定であり、殿への目通りは叶わない。
峰口も観念した。

 六蔵は峰口との対面で手応えを感じていたが、
後日、峰口から不採用を知らされた。
「当家も色々あってな、一筋縄ではいかんのだ」
 と峰口は言葉を濁した。
 峰口の返答に、
(それもまた結果だ)
 六蔵は一礼し、立ち上がろうとすると、
「六蔵」
 峰口は六蔵に書状を渡した。
「紹介状だ。(神保方)豊地家臣、峰口左京少進
(さきょうしょうじょう)義道として、其の方の人となりを
認め、各城方に推すという内容だ。領内の先々へ持って行けば、
幾らかは足しになるかもしれぬ。疑いあれば中を改めてくれ」
「・・・・これは、わざわざお手数かけまして、
恐悦至極に存じます。有難く頂戴致します」
「死に別れとは違うからな。縁あれば再び会おうぞ」
「は、是非に」
 六蔵は丁重に受け取ると深く謝し、部屋を後にした。

 玄関を出た六蔵は空を見上げると
「あ〜ぁ」
 と、軽くため息をつき、あくびをした。
 出迎えようと近づいた弥助は、六蔵を見て瞬時に
笑顔が消えた。
 六蔵は表情も変えず淡々と、
「・・・・駄目だったよ」
「・・・・何と言われたんですか?」
「当家も一筋縄では行かないとさ」
「審議で揉めたんですね・・・・大方察しはつきますよ。
頭がいると邪魔なのかな・・・・」
「だが、左京様から紹介状を頂いたよ。行き先で足しになるかも
しれんと。控えめなとことろがまた見事な御方だな」
「あ〜、さすがですねぇ」
 二人はしばらく無言で歩いたが、
「まあ、でも、どこも募ってますからねぇ。
・・・・じゃあ、次は吉兵衛んとこですかね」
「うん、せっかくだから行ってみるよ」
「で、月一の会合は?」
「もちろん続けようや、縁切りはもったいねえよ」
「そうですね。じゃあまた」
「うん、おめえも謀反起こすなよ」
「そんな偉い立場じゃねえですよ」
 弥助は思わず笑い出し、
「・・・・でも、出来る立場になりてえなあ」
 本心からつぶやいたようだった。
「やっぱりおめえらしいな」
 六蔵は城門を出て行った。

 豊地城中の一室、机に向かい文書作成の峰口。
 ふと筆が止まり、
(完璧な者などあるわけもなし、
その上で活かすのが上司の務めであろうに・・・・)
 先日のわだかまりが抜けていない。
 峰口は今後の敵勢への攻略に、多くの人材が必要と考えて
いる。城主の新里もその考え故に坂原や峰口に命じていた。
 新進気鋭とも噂され期待される新里兵部の豊地城を訪ねる
浪人は多いが、坂原の人選は優れた者を抱えることにあって、
その条件に合わない者は好みの絵札でも選り分けるように、
容赦なく否定し切り捨てている。
(・・・・当家は少数精鋭など望んではおらぬ)
 坂原を差し置いて新里に相談したとなれば、
坂原は面子を潰されたとして激怒するだろう。
 とはいえ、坂原に直談判したところで、たちまち反論とは
いえない反論をまくし立てられ怒鳴られ、説教を食らうのが
関の山だろう。これまで何度もやり込められている。もはや
理屈ではない。
 峰口の仕事が出仕志願者の対応だけのわけもなく、通常の
仕事があり、負担はいつになく大きい。連日の激務に加えて
坂原との関わりでは、心身共に疲労が募る。
(こちらの努力を無にするような独断にはうんざりだ。
大膳(坂原)様では話にならぬ・・・・)
 峰口は直接新里に相談に向かった。

 豊地城主、新里兵部大丞(ひょうぶだいじょう)義正。
 神保一門として各地の戦に参陣し、数々の武功を挙げて、
先代神保惟道により領内東南の重要拠点、豊地城を任された。
 坂原大膳とは幼馴染で気心知れた仲であり、
互いに長所短所を分かっている。
「(坂原)大膳は強情な面があるが、奴の気骨は戦に
活かされる。これまでの戦は奴の働きが大きい」
 身近で坂原の言動に接してきた峰口からすると、
(どこまで本当なのやら・・・・)
 との疑念が拭えない。
 義正も坂原も子供でもなければ、共に一神保家臣として過ごし
た時期も過ぎて、片や城主、片やそれを支える重臣である。
 時期も立場も変われば判断も言動も変わることはよくある。
働き者が怠け者になったり、おとなしいはずが調子づき、
威張り出すこともあるだろう。
(殿の知る大膳様は、あくまでも殿の前での大膳様であろう)
 仮によく知っていたところで義正が家臣を前に、
他の家臣の陰口を叩くわけもない。
 峰口の報告に義正も頷き、
「家臣当時と違って、城主となれば更に人も要る。直臣を
増やして新たな戦に備えねばならぬ。お前の言う通り、
人選に厳しいのはこの時期では現実的ではない。奴にはよく
言っておこう」
 と同意したが、峰口は浮かぬ顔のままでいる。
「左京、心配するな。人選は俺も関わることだ。
俺が気づいたことにしておく。それでよかろう?」
 坂原が部下に厳しいのは義正も承知なのだろう。
「御配慮、感謝致します」
 峰口の顔が少し明るくなった。

 却下された出仕願いの者達の資料も総て保存してある。
 いかに義正の命とはいえ、坂原が一度却下した人物を
一転して登用するとは思えないが、これまで通りであれば
義正の命に背くことになる。
(・・・・さて、大膳様はどう判断されますかな?)
 峰口は敢えて却下済みの資料も再び坂原に提出し、
「殿の命により、取り逃がした者達を再審せよ
とのことにございます」
 と裁断を仰いだ。
 実際には義正は「取り逃がした」とは言っていない。
「却下分も見直せ」であり、安易に切り捨てた坂原への
峰口の嫌味だった。
 坂原はいかにも不愉快そうな顔で資料をにらみ、
複数の人物を呼び戻すことを決めた。
 しかし、先日の六蔵の名は無い。
 血気盛んで鳴らした戦場の猛者からすれば、
六蔵などは既に老いた愚鈍な者に思えたのだろう。
 一方、峰口からすれば否定する理由が無い。戦が駄目であれば
後方の雑用でも門番でもいつでも何でもあるではないか。
(人を増やせと殿は御命じになったのだぞ、聞いてなかったか、
大膳)
 峰口は憮然として、
「六蔵の名がありません」
 と指摘した。
「殿の命は、あくまでも人を増やすことにあり、それ故に不足と
判断して再審を御命じになられました。わざわざ当家へ訪ねて
来た者達には特に配慮あって然るべきです。過度な選り好みに
道理はありません。我を捨てて了承されますように」
 口うるさく高圧的な坂原には、殿を後ろ盾として対抗するのが
手っ取り早い。
 峰口も強気で坂原に妥協を促した。
「・・・・・・」
 坂原は不機嫌な表情ながらも怒鳴り返すことなく
文書を見つめ、
「・・・・・・わかった。登録された者どもはその経歴、実績を鑑みて
相応の禄を与え、それぞれに役目を与えよう。沙汰は左京に
任せる」
 ボソッと答えた。
 結果、峰口の判断で、却下されていた半数以上の登用が
決まった。
 その一人に六蔵もあった。
 祐筆の吉池佐吉が、弥助に六蔵を呼び戻すように伝えた。
「再審の結果、六蔵殿も登用が決まった。紹介役だった
お主が当人に知らせてやってくれ」
「はぁ、なれど、六蔵殿は他へも誘われておりまして、
戻るかどうか・・・・」
「決まった以上放っておくわけにはいかん。
知らせるだけ知らせてやってくれよ」
「は、では、ひとまず行ってまいります。遠距離で城か自宅か
わかりませんので、数日かかると思われます」
「うん、左京様に伝えておこう」
 弥助は城を出て行った。
「え〜と、頭のうちは・・・・いや、城かな・・・・
吉兵衛んとこはどこだっけ・・・・石峰城か」
 吉兵衛の仕官が決まり六蔵に紹介された石峰城は、
神保領内北西の山間部にあり、豊地城から一番遠い城になる。
昼からひたすら歩けば、たどり着くのは翌日夕刻か夜かも
しれない。無論、そんな無理はできない。
 六蔵の家は神保城西北の山村にある。
「城まで行ってらんねえな。先に頭んち行ってみよう」

 新里家中では峰口の指図の下、これまでの人選も見直されて、
ある者は呼び戻されて召し抱えられ、ある者は他を当たるため
敢えて断って来た。
 義正の命とはいえ、再審を言い渡され、任せたとはいえ
峰口にひっくり返されたような人選の見直しは、坂原の面子を
潰したも同然となる。
(大膳、心中穏やかではなかろう)
 峰口としては愉快な反面、今後の坂原の態度が気がかりで
ある。
 坂原はその後、峰口に伝えている。
「人を見極めることなど容易ではない。なれど怠れば我が身や
家中にさえ災いとなりかねん。おまえはまだ若いからその点は
弱い。それ故敢えて応対役を任せておる。様々な境遇の者を
知ることはおまえの人を見る目を養うことになる。苦労するだけ
身になる。戦も政務も同じだ。譜代の立場に甘えるな」
「は、よく心得ましてございます」
 峰口は深く一礼し、坂原を見送った。
(なかなかに正論ではあるが・・・・)
 同じ意見も誰の発言かで重みは変わる。
(所詮は詭弁に過ぎぬ)
 峰口には坂原の理屈は、怠慢と責任転嫁の
正当化にしか思えない。
(いずれ改めて殿に物申さねばならぬやもしれぬ・・・・)

by huttonde | 2017-08-17 06:40 | 漫画ねた | Comments(0)
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