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戦国物語 十六
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足軽六蔵奮闘記 十六

弥助の決断

 六蔵、弥助、吉兵衛の毎月の会合は、古竹攻めや豊地城と
石峰城それぞれの仕事が立て込み、二ヶ月ぶりに六蔵と
弥助だけになった。
 六蔵は豆腐を頬張りながら、
「吉兵衛は、半年かけて石峰領内を調べ上げて資料をまとめる
そうだよ。後々まで残る名誉の大仕事ってわけだ。真面目な
あいつには適役だな」
「じゃあ、その間は来られそうもないですね」
 六蔵は古竹攻めでの“門前の芝居”や“全員討死で無事”を話し、
弥助もまたその時について、
「決着つくの早ぇなあと思ってたんすよ。そういうことだったん
ですかぁ。もっと活躍出来ると思ったのに、こっちは狼煙台で
留守番でしたよ」
 とぼやいた。
「城攻めとなれば長くかかるか犠牲は付きもんだが、
どっちも無かったのはよかったなぁ」
 と微笑む六蔵に、
「まあ、そうでしょうけど・・・・」
 弥助は不満そうである。
「あれで古竹が神保領になったな。東南は確実に反神保が
削られてる。神保は大躍進だ」
「そいで、それを治めるのが左京様ですよ」
「左京様は・・・・豊地勢じゃねえのか?」
「本城の左兵衛様によって、直々に古竹領を任されたそうです」
「へ〜、左京様は本城からすれば家来の家来だろ、え〜・・・・
陪臣だっけ。ずいぶん思い切ったな。豊地の殿様は納得
してんのか」
「殿は名誉だと納得されてるらしいんですが、問題は残った
家来ですよ」
「うん?」
「残ったのは大膳とその家来ですよ。これまでは左京様と
その家来筋がいたから抑えが利いたというか、修正が利いた
けど、それが無くなったとなると、どうなることやら・・・・」
「ふうん・・・・適当になりそうかね」
「一応、左京様とその家来の穴埋めってことで、本城からは
与力が三人来られたんですが、大膳とは立場は互角らしい
けど・・・・」
 弥助は渋い顔を傾けた。
「譜代で筆頭家老だっけ。めんどくせえなぁ」
「大膳の家来方も、どうしても媚びるから理不尽が消えねぇ
ですね・・・・」
 弥助は浮かない顏をしている。
「・・・・なんかあったか?」
 弥助は言い澱んでいたが、
「・・・・いつものことだけど、古竹攻めが終わった直後にも、
ちょいと行き違いというか、いざこざがあって・・・・」
 古竹攻めの際、神保方勝利を知った弥助達は、持ち場の狼煙台
を離れて山を降りた。このとき降参して一緒にいた古竹方足軽
二人は、近隣の村に帰った。神保方の多くが古竹から引き上げる
際、弥助は直属の上司である森成次郎豊英に、狼煙台での死傷者
の数と共に報告したが、森成は上司の高木十蔵尚芳に
伝えなかった。
 他の報告からこれを知った高木は怒った。
「敵兵が勝手に村へ帰るのを放っておいたのか」
「敵兵と申しましても、あくまでも我が方に降参し、戦の決着が
付き、共に狼煙台を降りてから後にございます。見逃したわけ
でも気づかなかったわけでもなく、人数も村も把握して
おります」
 事前に降参を認めないとか、帰してはならぬという命令は
受けていない。
 その者らが諜者( ちょうじゃ )ならばまだしも、一介の足軽
に過ぎず、戦が終わったから帰したという対処は特に珍しくは
ない。
 瑣末な事にもこだわり、不足不備に怒りを表すかどうかは、
やはり各々の性格、気性による。
 敢えて報告に加えなかったことに森成の独断、不実を感じた
高木は腹を立てた。
「報告は任務の一つである。それを怠るとは何事か!」
「は、戦が終わり、油断がありました。申し訳ござりません」
 森成は立場上逆らえるものでもなく、高木の一喝に膝を着いて
平伏して詫びた。
 敵兵だった二人を村へ帰したのは弥助である。
 弥助の判断に森成は納得した故に了承し、上司の高木には
蛇足として知らせなかった。
 責められかしこまる森成の後ろに控えていた弥助は、森成に
対する申し訳なさもあり、黙っていることに呵責の念が
湧き上がった。



「・・・・あの、その敵兵の措置につきましては、それがしの一存に
ございまして・・・・」
「弥助、無用だ」
 森成は頭を下げたまま後ろの弥助に一喝したが、
弥助は続けて、
「降参したのは地元の農民足軽故、現場の判断として村への帰郷
を許しました。我が部隊も神保方としても、それによる何ら
支障も不利も無く・・・・」
「黙れ! 報告を怠って言い逃れする気か!」
 高木が弥助を怒鳴りつけると、
「騒々しいな。どうした」
 坂原大膳が現れ、一同は揃って一礼した。
(あ〜、まためんどくせえのが来やがった・・・・)
 弥助は頭を下げたまま苦い顔になった。
 坂原は高木から事情を聴くと、
「弥助?(森成)次郎の家来か」
「は、つい先日、豊地勢に加わりました家来にござります」
 と、森成の説明に坂原は思い出したらしく、
「・・・・ああ、須田城にいた六蔵の家来か」
(覚えていたか・・・・)
 弥助は頭を下げていたが、高木の上司である坂原が来たならば
と思い直して顔を上げ、
「申し上げます、帰郷した敵兵二人は近隣の農民でございます。
戦が決着故、それがしの独断で帰しました。戦さ場での煩雑を
避けるべく簡略化致しまして、報告に加えぬことについては、
決して問題とはなり得ぬと考えます」
「・・・・・・・・」
 坂原は弥助の前に立つと、弥助の左頬に平手打ちし、
弥助は後ろへ尻餅を着いた。
 更に坂原は弥助の左肩を蹴りつけて、後ろへ勢いよくひっくり
返った弥助の横腹を再び蹴りつけた。
「うっ」
 弥助は低く呻いた。
 人目を憚らぬ坂原の折檻に弥助は殺意を持ったが、坂原を
斬ったところで、すぐさま他の者に斬られることは明白である。
 弥助は倒れたまま一瞬、怒りの目を坂原に向けたが、
「なんだその目は!」
 と坂原に怒鳴られると、力無く目を伏せた。
「弥助、おまえが六蔵と共に活躍したと言っても、所詮は
足軽風情の身だ。豊地に仕官が叶ったとて勘違いするな。
半端者に頼るほど当家は困っておらぬ。調子付くな!」
 坂原が怒鳴り、傍らの高木は無表情に弥助を見下ろし、
森成は固まったように平伏している。
 弥助からすれば、高木も森成も三十半ばのいくらか年上とは
いえ、坂原大膳には年下の若者に変わりはない。
「最初が肝心だ。甘やかすと付け上がる。何事もけじめを
つけぃ!」
 坂原は怒鳴るとその場を去り、高木らは一礼して見送った。
(まさに鬼頭(おにがしら)、猪大膳だな・・・・)
 弥助は起き上がって尻についた砂を払いながら座り直した。
 高木は素っ気なく、
「次郎、そういうことだ。以後気をつけろ」
「は」
 森成は改めて一礼した。

「・・・・ふん、聴いてるだけで腹が痛くなりそうだな」
 六蔵は目を細めて苦笑した。
「戦は完勝でしょう? 終わってやれやれと落ち着いたと
思ったら、それで現場はピリピリで、居づらいったら
ねえですよ」
「それでほっぺたが少し蒼くなってんだな」
「え、跡残ってますか?」
 弥助が左頬に手を当てた。
「怒鳴られるだけもきつかろうに、殴る蹴るやられたんじゃ、
たまったもんじゃねえな」
「体がどうこうより、精神に来るんすよ。それがきつい・・・・」
「でも、おめえは報告したんだろ? 報告を怠ったのは
その森成って上司だろ?」
「いやぁ、あれはついでに報告ってなもんで、俺自身どうでも
いいと思ってましたよ。調べろってんなら別だけど、
あれがどうでこれがどうだなんて、何でも言うわけねえし」
「・・・・うん、手抜きと思われたのがまずかったな」
「融通が利かねえというか、勝手にされたから腹立ったてのが
一番の理由でしょう」
「そうだな・・・・下っ端には厳しいもんだよ」
「頭、戸成んときはどうでしたか」
 戸成の城にいた頃の六蔵は、まだ十代の若者である。
「・・・・そりゃぁもう、雑魚だよ」
 六蔵は伏し目がちに何やら思い出しているようだったが、
「・・・・だが、それで腹立てて相手を殺してたら、
俺も殺されたろうな」
 上司の性格次第では白を黒と言い、理不尽に怒り、
泣くこともある。
 耐えて報われればいいが、そのまま無念の死に向かうことも
あるのが戦国の世である。
 弥助は杯を傾けると、
「大膳が譜代なのは別に実力じゃねえし、俺が譜代だったら
もっとましになれるのに・・・・仕官先間違えたかな・・・・」
 いかにも苦々しくつぶやいた。
「おめえは俺と違って明るくてしぶとい奴だ。嫌がらせが
あっても、それで落ち込むわけでもあるめぇ」
「買い被りですよ・・・・最近はぼやいてばかりだし・・・・」
 弥助はふてくされた調子で豆をかじった。
 いつもは明るく饒舌な弥助が、今回は暗く沈んだ調子に
なっている。
「・・・・他にも色々あるんか?」
「・・・・まあ、ありますけど・・・・」
 六蔵も弥助の本心に触れた思いで返答に困り、
しばらく無言が続いた。
「・・・・なあ弥助、どうしても辛かったら石峰に来い。
俺が知る限りでは、石峰にはそんな横暴な奴はいねえよ。
俺が話を通してやる。吉兵衛も協力してくれるだろうさ」
「・・・・でももう三人家来がいるから、はい、さよならって
わけにはいかねえし・・・・」
「おめぇに代わる上司はいくらもいるだろう。その家来に
気骨がありゃぁついて来るさ。・・・・まあ、浪人では支払いも
出来ねえけどな」
 六蔵が須田城を出たとき、弥助も吉兵衛も同意して六蔵に
ついて来た。六蔵同様、今の理不尽に耐えるくらいなら、
自分で選んだ不遇の方がましだと思えたからだった。
「・・・・そうですね・・・・」
 自分で豊地城を仕官先に決めた弥助としては、判断を間違えた
と認めたくないのか、路頭に迷うのを心配したのか、六蔵の
勧めにも決めかねていたようだった。

 だが、一ヶ月後、再会した弥助は機嫌が良かった。
 再び六蔵と弥助だけの飲み会となったが、前回と打って
変わって弥助は楽しそうである。
「どうしたぃ、解決したんか。大膳でも斬ったか?」
「そんなぁ、露骨だなあ」
 からかうような六蔵に弥助は笑った。
「・・・・ああ、異動でもあったか。それで関わりが無くなった
とか」
「へへ〜、たしかに関わりは無くなりましたね」
 弥助はにやついている。
 六蔵は気づいたように、
「・・・・おめぇ、もしかして、やめちまったか?」
「・・・・それも考えましたよ。まあまあ、一杯行きましょうよ。
酒も久々なんすよ」
 弥助は多めに酒と肴を注文し、膳の上にはいくつもの
肴の小皿が並んだ。
「吉兵衛は相変わらずすか。奴もがんばってんなぁ」
 酔いもあってか、弥助の明るい雑談が続いたが、杯を重ねる
ごとに、落ち着いた調子になり、弥助は周りを気にするように
見回すと、
「・・・・頭だから話しましょうか」
 と、六蔵に顔を近づけて低く小声でささやいた。
「?」
 思わせぶりな弥助に六蔵も注目した。
「・・・・一人、殺ったんですよ。城中の上役なんですがね。
まあ、さすがに名は出せねえけど」
「!?」
「城内でバッサリなんて無理だし、なんとか一人に出来ねえ
かなーと色々考えて、城外へおびき出すことにしたんですよ。
で、長年敵になってる隣国の屋久(やく)の家臣のフリして
書状を書いたんです」
「屋久・・・・豊地の東隣か」
 六蔵も身を乗り出すように聴き入った。
「と言っても、書いたのは近所の寺の住職です。丁寧な候文
なんで、俺には無理ですから」
「候文? だが、そんな書状書くとなりゃあ住職も怪しむだろう」
「ええ、だから、新参の俺が手柄を立てたくて、屋久の家臣に
調略を仕掛けようと手紙を思いついて、住職に協力を頼んだ
っていう建前で、書状に書く互いの名前までは念のため未定
ということにして・・・・」
「・・・・で、内容は?」
「内容は、当方、現状に大いに不満あり、一大決心して伸長
著しい神保方に加わりたい、ついては神保方、豊地城で
名高い、ん〜殿に詳細を話したいので、密かに顔合わせ
願いたい、で、互いに一人が望ましく、場所は国境に近い
どこそこの神社にしてくれれば自ら出向き、そちらも当人
一人とはっきり分かればこちらも堂々面会致す所存、
てな調子で、それを屋久側に渡るようにすると
住職にも伝えたんです。敵の疑心暗鬼を誘うため、と」
「うん、つまり・・・・屋久方の誰かが神保方に寝返る
と知らせる書状を住職に書いてもらって、屋久方に渡す、と。
で、神社てのは、場所は自分で決めたわけか」
「ええ、神主が他と掛け持ちなのか、無人の小さいとこが
あったんですよ。で、書状は後で名前を足して、
実際に渡すのは俺の上役・・・・」
 弥助はニヤついた。
「だが、そんな書状は城主に渡される心配もあるだろ?
それに返事を書くとして、他の者に渡っても危ねえし」
「まあ、順番に言うと、その書状は俺が直接上役に
手渡しました。門番から渡されたってね。で、『珍しいですね、
こんな書状が来るなんて、 もしや敵からの〜』なんて関心
持ったフリして敵からの調略を意識させたんですよ。
中身は敵の家臣が、上役を名指しで内密に会いたいと
言ってるわけで・・・・」
「じゃあ、上役はおめえが書状を覗き見したのか
疑うんじゃねえかい?」
「ええ、上役はお前見たのか? と聞いて来ました。そこで
すかさず土下座して、申し訳ございません、書状は開封可能な
ため、そのままお渡しするのは如何なものかと気になりまして、
中身を改めさせて頂きましたって謝ったんです」
「そしたら?」
「一発怒鳴られたけど、それだけ。それよりも書状の扱いに
困ったんでしょうね。そこで、真面目な家臣なら城主に
渡しちまうでしょう。でも、上役も野心はあるし、屋久の家臣を
引き抜くことは手柄になる。せっかくの書状を渡すのは
もったいねえと考える。場所は神保領内の神社で、当然、
疑うにしろ、真に受けるにしろ、いざとなりゃぁ相手を
斬り捨てるも無視もいい、てなもんで、では相手の望み通りに
密かに会ってみよう、となるでしょ」
「う〜ん、どうかなぁ・・・・」
 六蔵は疑念を示すが、
「だから、一応は待ったをかけたんです。慎重なフリして
『ここはまずは内情を探るべきかと』なんてね。それで、
俺は互いの調略を知ったことになるわけだし、何人も知られる
わけにも行かないし、返書を届ける場合は私にお命じ下さい、
と。で、俺が屋久側に届けることになったってわけです」
「うん、屋久側に渡したフリをしたと?」
「ええ、もちろん実際に行ってきましたよ。物見気取りの日帰り
で屋久の城下までね。後々役に立つだろうし、気分転換に
なりましたよ」
 弥助はにんまりとして、焼き味噌をペロリと口にした。
「しかし、それで指定場所で一人になるとは限らんだろ。
そこで 上役が騙し討ちをしようとか兵を潜ませていたら・・・・」
「いえ、事前に数人を神社近辺に手配して、危険を感じた場合は
引き返す、と知らせたんです。あくまでもお互い様と強調
したんですよ。こちらを殺そうとするなら、そっちも同じだよ、
交渉は無しなしだぞ、という意味です」
「・・・・互いに一人にさせる、か」
「で、俺は事情を唯一知る立場だし、護衛を兼ねて上役の付添い
を願い出て、現場の神社に同行して・・・・」
「そこで一人にさせて、斬ったと?」
 弥助は無言で頷いた。
「・・・・遺体はどうした?」
「裏に埋めました」
「ほお・・・・やるもんだなあ」
 六蔵は感心したが、
「・・・・だが、その者が殺されたとなれば城も大騒ぎだろう。
もちろんおめえだって疑われる」
「上役を嫌ってる奴はいくらでもいるし、殺されたとは
決まってませんよ。敵に寝返ったかもしんねえし、書状を
見つけましたと、あとで上役の返書を与力の一人に
渡しましたよ。なんたって上役直筆ですからね。その後は
殿に渡ったろうなあ」
「・・・・じゃあ、家中の者は、上役は敵に誘われて、
城を出たと思ったわけか」
 六蔵も推測した。
「おそらく、ですけどね。本当の敵は家中の俺でしたけどね」
 弥助はニヤついた。六蔵は目を細めて、
「・・・・怖い話だなあ」
「いやいや、闇雲にやってるわけじゃねえですよ、ちゃんと
理由があって選んでんだから。殿はどうあれ、家中はホッと
してるだろうなあ」
 弥助はにんまりしている。
「・・・・弥助、その話、他には話してねえよな」
「ええ、他にはいません。住職にも言えねえし」
「・・・・わかった。じゃあその話はこれっきりにしよう。
ま、酒の席での話だ。酔ったついでの法螺話だな」
 六蔵の言に弥助は否定せず、
「そうですね。そういうことで・・・・」
 と言葉を濁し、二人は揃って杯を傾けた。

「左京様」
 夕刻の大黒城、二の丸の峰口の部屋に、家来の小助が
入ってきた。
「・・・・大膳様が、斬られました」
「なに?」
 峰口は思わず目を見開いた。
「屋久領に近い古い神社にて、はっきり目に致しました」
「・・・・斬ったのは誰か」
「弥助」
「・・・・人違いではないのか」
「大膳様は馬で城を出られて、直後に弥助が護衛に付いて神社に
向かうと、大膳様が先に社(やしろ)に入り、その後に弥助も
入りました。間も無く弥助が扉を開けて辺りを見回すと、
首元を赤くした大膳様を抱えて裏に回り、埋めておりました」
「・・・・他に人は?」
「誰も」
 弥助一人によって坂原が殺されたという。

 長らく坂原の抑圧に耐えて来て報復を考えていた峰口は、
常に仕事を押し付けて自身はどこで何をしているのかも不明で
あった坂原を疑い、密かに小助ら複数の家来を使って坂原を
監視させ、坂原の遣い役だった弥助の尾行もしていた。
 弥助は屋久側城下まで行った際は各所を巡り、茶店で一服
すると豊地城へ戻った。
 峰口は弥助が坂原から敵情視察を命じられたのだろうと察しを
つけ、監視を続けて何かあれば義正に知らせるつもりだった。
 小助の知らせに峰口は、事の経緯を改めて思い返し、
考えを巡らせた。
 坂原大膳は峰口だけでなく、家中の者達にとっても目の上の
たんこぶだった。
 弥助が坂原に付き従う家来の一人であれば、苦労が付き物で
あることは容易に察せられる。
 弥助によって殺されたのであれば、坂原を城外の神社に一人に
させ、その首を狙った計画的なものだろう。
 理由はどうあれ起こるべくして起きたといえる。
(・・・・弥助がやらなければ、いずれ俺がやったであろう・・・・)
 こうなると弥助を如何にするか。
 弥助の登用は審議の結果とはいえ、峰口も推した一人だった。
体躯頑健、明るく前向きで信頼に足る、将来有望の若者と
思ってのことだった。
 事態が判明した今、ならば殿義正に報告、弥助に厳罰なる
処分を、とはいかない。
 義正は無論、神保本城、また諸城に知れたら義正の不祥事
として責任問題になりかねない。
(それより何より、これが知れ渡れば、弥助に命じたのは
俺だと真っ先に疑われるだろう)
 坂原には常に仕事を命じられ、怒鳴られ、時に言い返す仲
である。豊地勢で坂原に次ぐ権限を持って対立もある者と
いえば、峰口が筆頭と思われていたことは承知している。
 今や峰口は豊地城を離れて、旧古竹領を治める大身であるが、
豊地城の者達が坂原の死を知れば、真っ先に峰口を疑うだろう
ことは明らかである。
 現時点では、坂原は行方不明、事情を知る者は自分と
小助しかいない。
(・・・・いや、弥助がいたな・・・・)
 弥助の屋久領への往復といい、いざとなれば敵、屋久による
策略で、坂原本人の不覚、不運として済ませることもできる。
 この件は内密にしておこうと思う一方、弥助をこのまま
豊地勢に置くのは危険として、何か策を持って家中から追い出す
か、逆に有用な者として大黒城へ呼び寄せるべきか。
(今や家中に人は多いが、ここまで思い切った者は
いなかった・・・・)
 坂原がいないのであれば、その権限は本城から来た与力三人
か、大膳の腹心、高木十蔵尚芳辺りに移っての城主補佐と
なるだろう。
 豊地城で坂原不在が騒がれ始めると、峰口は坂原不在を屋久か
須木江側による調略、坂原の裏切りと匂わせた上で臨時措置
として、
「我が大黒城及び支城の旧古竹家臣の一部を、念のため豊地城
にも送って旧臣達の野心や連携を断ち、気心知る若い者を勉学を
兼ねて当大黒へ呼び寄せたく」
 と、坂原の家来の再配置も含めて義正に献策し、許可を得ると
古竹旧臣数人を豊地城へ送り、坂原の家来数人を自身の配下
とし、弥助もその一人に加えた。

 豊地城に坂原がいなくなって、弥助は幾分気が晴れたとは
いえ、その腹心、高木十蔵尚芳を筆頭に、その家来筋が占めそう
な状況では解決とはいえず、かといって気に入らない者を
いちいち殺していては、今後何人犠牲にするかわかったものでは
ない。
 思い返せば憎悪の念が蘇り、
(もっと苦しめてやるべきだったかな・・・・)
 弥助は座っている坂原に対して、刀で首を二太刀斬り浴びせ、
とどめに正面から思い切り喉を突いた。
 憎しみから体重をかけるように思い切り力を入れたが、
刃は骨に当たったせいか、貫くことなく坂原を後ろへ押し倒し、
倒れた拍子に刃は首から抜けたため、目を見開いた坂原の顔を
踏みつけると、再び首に刺して首の半分程を切り裂いた。
(必要とあれば何人でも殺ってやろうか・・・・いや、
やっぱり難しいな。しくじるわけにはいかねえ・・・・)
 弥助としても、茅部、須田、そして豊地と、足軽からの
苦労を耐え続けて来た。
(別に謀反起こそうってわけじゃねえし、
我慢するしかねえよな・・・・)
 と思う一方、
(十蔵様であれ誰であれ、大膳の真似をするなら、
同じ目に遭わせてやろうかな・・・・)
 との考えも捨てていない。
 敵を討つ如く、殺すべきは誰かは選べばよく、殺生がいけない
とは思っていない。
(これも戦だ・・・・・・)
 峰口の下で統制が取れていれば、理不尽な暴力を受けることも
あるまい、家臣として穏便に勤めに励むことが出来ればそれが
一番望ましいと思っている。
(敵は敵方だけで充分だ。俺を怒らせないでくれ・・・・)

「大黒城から異動の指示を受けておる。弥助、おまえも向こうへ
行くことになった。仕度せい」
 直属の上司である森成から聞いた弥助は喜んだが、
移るのは弥助と同格の若者三人だけという。
「(森成)次郎様は行かないのですか?」
「俺は呼ばれておらぬ。向こうからは古竹の旧臣が三人
来るそうだ。分散させて野心を摘んでおこう、
ということだろうな」
 大黒城へ呼ばれた弥助達三人は、齢三十を前のほぼ同世代
である。新入りの弥助は後輩となるが、それぞれ坂原の下での
苦労もあり、家中では数少ない親しい関係になっていた。
 三人は広間に並んで峰口にあいさつした。
 峰口は機嫌も良く、
「豊地で知らせは受けておろう。殿(義正)の許可を得て、
古竹旧臣の一部と豊地の若者を交換した。おまえ達は今後
こちらで働いてもらうことになる」
 峰口左京といえば、豊地城では軍議に居並ぶ重臣の一人で
あり、常に端に控えていたが、今、目の前の峰口はまさに
殿らしく、傍に小姓が控え、上座に堂々座って三人に対面
している。
(・・・・そうだ・・・・左京様は今や大黒城城主で殿だ・・・・)
 誰の目にも明らかな大抜擢であり出世である。
 三人は簡単な挨拶、顔合わせを終えると、しばらくして
小姓の庄蔵から、
「弥助殿、殿がお呼びにござる」
 一人ずつ、改めて話があるという。
 庄蔵の案内で再び広間に戻ると、峰口一人だけいた。
「・・・・・・弥助、こうして顔を合わせて話すのも久々だな。
面談以来かな」
 二人だけのせいか、峰口は笑顔でくつろいだ様子でいる。
「は、左京様には、格別のお計らいを頂きまして、奉公も叶う
ことが出来、厚く御礼申し上げます」
 弥助は丁重に平伏した。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。豊地では苦労が多かったろう」
「いえ・・・・」
 長年豊地城にいた峰口である。弥助とはまた違う
気苦労もあっただろう。
 豊地城では一家臣であり一上司であった峰口が、今や六万石の
領主であり殿である。一方弥助は家来三人を持つ足軽頭で
あるが、通常は殿様と対面など望むべくもない。
 笑顔の峰口に安堵したものの、弥助は緊張を持って対面した。
「弥助、おまえも承知の通り、豊地城で人を募り、おまえは仕官
を願い出た。家中の数人が審査の結果、おまえを登用することに
決めた。俺も推した一人だ」
「は、殿のおかげをもちまして、それがしの暮らしも上向き、
深く感謝しております。今もこうしてお目にかかることが出来る
ことは、嬉しくもありますが・・・・なんとも妙な、不思議な気持ち
にございます」
 弥助はぎこちなく頭を下げた。峰口は頷き、
「とはいえ、仕官が成れば成ったで新たな立場、状況で色々苦労
もあろう。どこでどうなっていようとも、生きて行くのは
なかなか面倒だからな」
「はい・・・・」
 苦労続きと思っていたが、あからさまにぼやく相手ではない。
弥助は返答に困った。
「俺も年輩の者からは若い故に馬鹿にされたり、こき使われて
気苦労も絶えなかった。若いのも一長一短だ。だが、正道を
歩んでの苦労であれば無駄はない。無論、好きで苦労する者は
おらぬが、苦労は糧になる」
 峰口の本心からであろう語りに、弥助も真摯に耳を傾けた。
「・・・・実はな、おまえがここへ移るにあたって、心機一転の
心構えであってほしくてな、突然ではあるが改名を勧めたい」
「改名・・・・」
「いや、弥助をやめろというわけではないぞ。これまで各武将
は、幼名から元服で名を改めて、更に改名するなどして出世して
行った。俺の場合は幼名が天命丸、仮名(けみょう)が喜三郎
で、周りからそう呼ばれるようになって、その後に官位を受けて
左京少進(さきょうしょうじょう)、略して左京と呼ばれるように
なった。で、義道が諱(いみな)、実の名だ」
「・・・・あの、喜三郎様ということは、殿は三男ということ
ですか」
「うむ、兄が二人いたが、一人は戦死、一人は病死だ。
それで峰口家を継いだ」
「そうだったんですか・・・・」
「こんなことはいちいち話さないからな。家中でも承知の者は
限られておる。まあしかし、そんなものだ」
「はい・・・・」
「諱は通常使われぬ。呼ぶのも失礼とされておる。公の書状に
記したり、特別な儀式でもなければまず使われぬが、おまえも
家臣として活躍するからには必要になる。おまえの場合は、
普段呼ばれておる弥助が仮名(けみょう)だ。
諱は無かったな?」
「はい、弥助だけにございます」
「うむ、これから更に活躍して家来も増えて、多くの者との
関わりも増えよう。そうなると仮名一つでは不都合も出てくる。
これを機に正式に名を改めて欲しい」
 立場が上になれば改名もあることは知っていたが、六蔵や
吉兵衛が同じこともあって、特に考えてはいなかった。
「あの、ならば、ぜひ殿直々に命名して頂きたく・・・・」
 弥助は手をついて頼んだ。
「俺か・・・・それでもよいが、後々恨まれても困るなぁ」
 峰口は苦笑気味に答えたが、
「いえ、一生ものとなれば、尚更お願い致します」
「そうか・・・・うむ・・・・」
 峰口はしばらく考えていたが、すぐ傍の机で一筆したため、
それを見せた。
「・・・・上に立つ者として寛大なる精神を忘れず、共に歩むべき
身・・・・寛大寛容の寛に義道の道で、寛道(ひろみち)。
どうだ?」
「弥助寛道・・・・」
「うむ、道は俺から贈る意味もある。一字拝領ってやつだ。
で、名字も無かったな」
「はい、無いままにございます、お願い致します」
「・・・・では、この城同様に、新しき城で新城・・・・」
「新城・・・・」
「すなわち、新城弥助寛道。どうかな」
「・・・・新城弥助寛道・・・・はい、いい名前と思います、
ありがとうございます、では、これより新城弥助寛道として
御奉公致します」
 弥助は笑顔で平伏した。
「うむ、しぶとく頼むぞ」
 峰口も笑みを持って答えた。

 弥助が帰ると、入れ替わるように小助が対面した。
「・・・・弥助を手元に置いて、一家来として全うさせますか」
「弥助にしても忌々しい記憶であろう。厄払いを兼ねて
改名とした」
「弥助を信じる、と」
「うむ。奴が城に来て対面したときは明るかった。それを
刃傷沙汰に向かわせるのは、相応の横暴や理不尽があったの
だろう。いかにも察しのつくことだ。二度と繰り返さないように
させたい」

by huttonde | 2017-12-25 04:00 | 漫画ねた | Comments(0)
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