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足軽六蔵奮闘記 二十四

吉兵衛登城

 神保と須木江・屋久との攻防が続く一方、
西の石峰城では、吉兵衛によって城下領内の情勢を
まとめた石峰地書が半年を経て総仕上げに入り、
原本を元に、城主の箕山内匠助惟光
(みのやま たくみのすけ これみつ)と、
譜代家老格、城山修理大進忠継
(しろやま しゅりたいじょう ただつぐ)に、
本城(神保城)への献本となる写本三部の作成を、
臨時配下となっている物書き頭・山野平四郎と
その部下三名によって進めていた。
「これで評価されれば、領内各地も同様に資料作りが
始まるかもしれません。となれば、先鞭をつけた
吉兵衛様と石峰城の名誉となり手柄となります」
 平四郎は今回の調査で資料の取りまとめを
受け持ち、吉兵衛の片腕として活躍した。
 一方、同じく臨時配下で護衛役だった槍持の
佐島兵吉も、得意の槍捌きを活かして、吉兵衛達の
護衛と山賊取締りに貢献した。彼がいなければ
吉兵衛一行は山賊達に襲われて、どうなっていたか
わからない。
 調査のために二人を付けたのは城山修理の
配慮である。
 人材の層の厚さと、それを見極める家老の存在は、
城にも領民にも望ましく頼もしい。
(田舎の山城とはいえ、侮れぬということか・・・・)
 吉兵衛は半年付き従ってくれた平四郎と兵吉、
選んだ城山修理に感心していた。
 この城に来て以来、中間として家来となっている
地元育ちの武松と正吉には雑用を引き受けてもらった。
「あちこちと付き合わせて煩わしかったと思うが、
おかげで仕事に専念することができた。
二人の苦労にも感謝する」
 吉兵衛が一礼すると武松も正吉も、
「いやあ、滅相もねえです、お役に立てたかどうか
気がかりでございました」
と、苦笑してぎこちなく礼を返した。




 吉兵衛監修の下、平四郎とその部下によって
数日かけて写本三部が仕上がると、
二部を城山修理に提出した。
「半年経て約束通りだな。誠にもって大儀」
と、修理は笑顔で吉兵衛と平四郎をねぎらった。
「殿に提出の際は吉兵衛と平四郎も来るがよい。
殿から御下問があるやもしれぬ」
「殿の御前に?」
 吉兵衛が城主箕山内匠助に会うのは、
登用が決まって直接挨拶をして以来になる。
(大仕事の御役目を終えて殿へ直々に
写本献上は、名誉の上に名誉だ)
と、満足な上に気分も高揚した。
 その後、内匠助に説明する修理の後ろに
控えた吉兵衛は修理に促されて、
「此度の御役目、私一人では到底叶わず、
修理様の御手配による物書き頭の山野平四郎殿と、
槍持の佐島兵吉殿の献身あってのことで、
何よりも許可して頂いたことに感謝致しております」
と、建前ではなく実感として内匠助に言上した。が、
「うむ、よく務めを果たした。大儀である」
「は、恐悦至極に存じます」
(・・・・それだけ・・・・か)
 と、
「吉兵衛」
 内匠助がぼそっと声をかけた。
「は」
「名は考えてあるか」
「名・・・・でございますか」
 吉兵衛は一瞬、何のことかと戸惑った。
「名を改める必要があろう」
 そういえばと、修理から改名の必要について
聞いたことを思い出した。
しかしその話は半年前になる。
「・・・・申し訳ございません、連日の御役目に夢中で、
すっかり失念致しておりました」
と、吉兵衛は頭を下げた。
「まだであるなら決めておけ。修理に報告せよ」

 献上を終えると修理に従って吉兵衛と平四郎も
廊下に出た。
「殿は満足されておる。気にするなよ」
と、修理が吉兵衛の拍子抜けした気分を察したかの
ように声をかけた。
「それから、殿も仰せの通り、名も考えておけよ。
改名後に本城へはおまえに行ってもらう。
それが今回の最後の役目だ」
 半年をかけての大仕事の総仕上げは、
本城に赴いて写本を献上することだという。
 吉兵衛は本城周辺で暮らしたことはあるが、
登城したことはない。
「・・・・私一人で、ですか」
「役目だからな。平四郎と兵吉も連れて行け。
その後はしばらく休養を取るが良い。頼むぞ」
 登城も自発的なもので予定の期日はないが、
一家来として無為に日を過ごすわけにはいかない。
 吉兵衛は借りていた執務室に一旦戻ると、
一人座り込んで考えた。
(え〜と、名字と諱(いみな)だよな・・・・
何とか吉兵衛誰それ、と・・・・)
 吉兵衛は外の景色を見ながら、
(山の中だから山中・・・・ひっくり返して中山
・・・・山城で山城・・・・山に住み、山の村・・・・)
 吉兵衛はあれこれ考えるが、取り止めがなく
なかなか判断がつかない。
(今まで名字なんぞ無かったからなあ・・・・
なんともまとまんねえや・・・・)
 吉兵衛は床に横になると天井を見上げて、
(家来吉兵衛・・・・城中吉兵衛・・・・叱られるかな・・・・)
 本城へ出向くと決まったからには、
もたもたしていられないが、
大事な名を考えるのに即決とも行かない。
 結局、吉兵衛は修理に頭を下げた。
「ここはひとつ、修理様より新たな名を授けて
頂けますよう、お願い致したく・・・・」
 すると、修理はふっと笑みをもらした。
「あの、何か・・・・」
「いや、しばらく前に六蔵からも頼まれてな、
丸々考えたことがあった。だが、
名は己の一生に関わるものだ。構わぬか」
「修理様の御命名であれば・・・・」
「世辞を申しても何も出んぞ」
 修理は笑うと腕組みをして、しばらく
考えた風だったが、
「うむ・・・・では、しばし待たれよ」
 そう言うと立ち上がって、部屋から出て行った。
「・・・・修理様・・・・」
(何か書き物でも用意しに行ったのかな・・・・)
 釈然としないまま待つことにした。
(・・・・そうか、頭(かしら)も改名してたのか。
そういえば全然会ってないな・・・・)
 吉兵衛が御役目で石峰領内を巡ってこの半年、
ろくに城にも戻らないため、
六蔵とは顔を合わせていない。
 程なくして修理が戻って来ると、
再び上座に移って立ったまま、
「では、吉兵衛、其の方の新たな名を申し渡す」
「は」
 吉兵衛は姿勢を正して平伏した。
「其の方、名を改め、西守吉兵衛光忠
(にしもり きちべえ みつただ)と致す。
以後、この名をもって忠勤に励め」
と、名が書かれた紙を前に差し示した。
 吉兵衛はそれを受け取ると、
その達筆の名に見入った。
「・・・・西守吉兵衛光忠・・・・」
「我が城は神保家西部の守りの要である。
其の方はこの城にあって、西の守りの
大事な柱となってほしい、その意味での西守だ。
そして、光は我が殿、惟光様の光である。
その殿への忠義、忠勤として光忠とした。
其の方の此度の働きを賞して、殿直々に
一字拝領の儀と相なった。格別の御配慮で
あること忘れるなよ」
「殿直々・・・・」
 修理が名を考えたと思いきや、
城主内匠助惟光から一字を譲られたのは
予想外だった。
 吉兵衛は恐縮して姿勢を正し、
「恐縮、恐悦至極に存じます、不肖吉兵衛、
石峰城にて忠勤に励み、骨を埋める覚悟に
ございます」
と平伏した。

 吉兵衛は執務室に戻って、平四郎と兵吉に
改名を伝えた。
「御改名おめでとうございます、
西守吉兵衛様、ですね。覚えました」
「更なる御躍進、ですな」
「お二人には世話になった。だが、もう一仕事だ」
 翌朝、吉兵衛は身を整えると、修理から預かった
書状と残る写本一冊を風呂敷に包んで抱え、
昼前には本城へ着くようにと、再び平四郎と
兵吉、武松と正吉を伴って、
朝早めに本城へ出かけた。
「本城へ行くのは考えてなかったよ」
「これも修理様の御配慮でしょうね」
平四郎が笑顔で答えたが、
「本城への往復であれば、
もう山賊の心配はありませんなぁ」
 兵吉が暇を持て余したように答えた。
「まあそう言うなよ。今日は御役目の
仕上げと思ってくれ」
「わかっております。吉兵衛様の御決断が
あればこそ、城下の問題も判明して解決となりました。
それがしも手伝いが出来たことは光栄にござる」
と笑った。
 吉兵衛一行は、昼前の明るい一帯を眺めながら、
本城へ進む街道をのんびりと歩いた。
「神保家は拡大方針だが、こうして見ると
領内はまだ手付かずも多いよなあ」
 本城と石峰城をつなぐ道は、近隣の道よりも
道幅も広く整備されて、東西をつなぐ大事な
街道だが、その周辺も場所によっては田畑も
民家もなく、雑草が生い茂る手付かずの地域が
あちこちと見受けられた。
「これから領民も増えれば、無人の地域も
開拓が進んで、更に石高も上がって栄えるな」
 吉兵衛には辺りに広がる空き地が
もったいなく思える。
 平四郎も笑顔で見回しながら、
「これはこれで好きな景色ですが、民家が増えて
田畑に変わった方が神保方としては望ましい
ことですね。人も増えれば人と物の流れが
活発になるし、商いも盛んになるでしょう」
 兵吉がからかうように、
「さすが商家の出だな。しっかり見込んでおるな」
「いやぁ、やはり賑やかな街並みも、
見ていて楽しく思えまして・・・・」

 本城こと神保城は、先代当主・武蔵守惟道
当時に、神保家の本城として築城された平城で、
地の利と将来性を考えて選ばれ、
拡張を繰り返して本丸から二の丸三の丸に、
川や水堀で囲んだ、領内の諸城と比べても
規模の大きい構えになっている。
 城下町も大半がそれに伴って整備された
新しい町だった。
 城内を案内する城兵の後ろで、
「さすがに本城は桁違いですね」
と、吉兵衛は辺りを見回した。
「先代の御屋形様が一代で築いた居城で、
それはもう念入りな作りとしたそうです」
 二の丸の屋敷に入ると、平四郎と兵吉が
控えの間に残り、吉兵衛だけ広間に通された。
 壁も床も石峰城とも変わりない質素な板張りで、
戸は開けられて中庭の明るさは室内にも及んでいる。
(・・・・本丸様が直々に来られるわけはないし、
家臣の誰かか対応するわけか・・・・)
 写本は石峰城に関わる重要資料であるから、
献上のための登城を軽んじるとも思えない。
 緊張を抑えつつ、しばらくすると、吉兵衛と
同世代に見える若い男がやって来て、
「おお、お待たせした。石峰から来たそうだな。
ようこそ参られた」
と、上座にどっかりと座った。
 吉兵衛は平伏したまま緊張した面持ちで、
「お初にお目にかかります、それがし、石峰城
箕山家配下、西守吉兵衛光忠と申します。
箕山家家老、城山修理の命により、
石峰城御領地に関する資料を作成致しまして、
その写本と書状を持参致しました」
「うむ、御苦労にござった。まあ、
楽にしてくだされ。
俺は本丸様でも後見役の梶谷左兵衛でもない。
その倅の内膳佑(ないぜんのすけ)宗善と申す。
本来は我が父、左兵衛が応対するところだが、
最近は諸々任されるようになってな、
あちらは半分隠居のようなものだ」
「内膳佑、様・・・・あ」
 吉兵衛は思い出したように、前に置いた
風呂敷の包みを解いて写本と書状を取り出すと、
「では、写本と書状にござります」
と、静々と膝立ちで進んで差し出した。
 受け取った宗善は、先に書状へ目を通すと、
無言のまま次に写本を手に取り、
「石峰地書、か・・・・」
と読み始めた。
 しばらくすると、顔を吉兵衛に向けて、
「・・・・これはすごいな。実に細かい。
よく調べ上げたものだ」
「恐れ入ります」
 吉兵衛は再び頭を下げた。
 宗善は書をめくりながら、
「・・・・石峰の地形に石高、田畑の作付各種と
収穫の具合に領民の数、職工や商家の状況、
疾病(しっぺい)の実情・・・・特産品に風習行事に
・・・・図面付きで内政全般、多岐に渡っておる」
 書に目をやったまま、ほーと感心する宗善に、
吉兵衛はつい嬉しくなって口元に笑みがこぼれた。
「・・・・しかも軍の状況までとは貴重だ。
よくここまで記されたな」
 戦となれば城の事情などお構いなしに、
兵動員や金銭物資など負担がかかる現実に、
各大名を支える譜代諸城、国人衆といえども、
自らの詳細は内密にする傾向にある。
 宗善にしても、このようなあからさまな
報告は初めてだった。
「城主は箕山・・・・内匠助様だったな、
承知されておるわけだな」
「は、同じ写本を献上致しました」
「うむ、して、何と申されておられた」
「よく務めを果たした、大儀である、と」
「うん・・・・他には」
「いえ、それのみで・・・・」
「そうか・・・・それは物足りんなあ」
「・・・・」
「貴殿に張り合う気はないが・・・・実はな、
内政全般を取り仕切るに当たっては、
やはり領内を調べるべきと思ったことは
一度や二度ではない」
 えっ、と吉兵衛は顔を上げた。
「ところが日々の雑務に追われている上に、
東部戦線に関わる外交もどんどんやらねばならぬ。
結局未だに手付かずという有様だ」
と宗善は写本を置くと腕を組み、
「この書状によれば、吉兵衛殿の発案により
実現の運びとなったとある。自ら考え実行して
成果を上げるとは、大手柄ではないか」
「い、いえ・・・・」
と、吉兵衛は気恥ずかしくなってうつむいたが、
「これによって山賊の存在も判って、解決に繋がった」
 吉兵衛はぎくりとして顔が強張った。
 山賊の存在は石峰城にとって治安維持の失態である。
 長らく一部の村が賊に与して金銭などを提供し、
城中の役人に共犯者がいたことが判明して、箕山家中は
深刻な事態になった。本城に伝われば箕山家は責任を
問われて城明け渡し、箕山の家臣達は複数切腹も
あり得た。
 結果として、山賊討伐を実行して逮捕者は死罪、
城方も警備に不手際があったとして、家来一人が
責任を負って切腹したことは本城に報告してある。
 しかし、城中、箕山家中の共犯については秘匿された。
写本にも山賊討伐は記されたが、共犯については
書かれていない。それは吉兵衛が決め、
事情を知る城山修理は黙認したことになる。
 宗善はそこまでは知らない・・・・はずである。
「・・・・畏れながら、山賊の一件は当石峰方の
失態であり、資料に記すことは迷うところで
ありましたが、事実は事実として記録すべきと
考え、敢えて残した次第で・・・・」
「まあまあ、皆まで申されるな。当時本城にも知らせて
くれたことに感謝申し上げる。吉兵衛殿の実直さは
我らにも有難い」
 吉兵衛は安堵して平伏した。
「・・・・それで、だ」
 再び吉兵衛が頭を上げた。
「これは石峰城だけで済ませるわけには行かぬ。
神保方諸城に同様の調べが必要と思う。情勢は常に
変化する。定期的に行う必要もあろう。領土全般に
実施されることについて、吉兵衛殿には御承知願いたい」
「は、至極ごもっともの御沙汰と存じます」
 吉兵衛はまた平伏した。
「ところで・・・・」
 宗善はまた何かを言いかけ、
吉兵衛は再び緊張して顔を向けた。
「貴殿、歳はいくつだ」
「は、今年で二十六になります」
「ほう、だいぶ若いな。俺はもう三十半ばに近いが
たいして差がないようにも見える。
石峰に仕えてどれ程になる」
「・・・・それがまだ、一年にも満たず・・・・」
 書状には吉兵衛に関する詳細は書かれて
いないらしく、吉兵衛はこれまでの経緯を
簡単に伝えた。
「・・・・ほう、茅部育ちで須田に移ったか・・・・
ということは、森柳や乙羽を攻めた後に
城を出られたか」
「はい・・・・」
「あの攻防は見事だったな。長らく続いた
戦を、まったく予想外に呆気なく終わらせて
しまった。城主は須田・・・・長一郎様だったな。
これまた呆気なく隠居されてしまったのは
惜しいことだ」
「あのう・・・・それにつきましては・・・・」
 吉兵衛は当時の事情を話した。
「詳細を知って頂くことは須田の殿様への
讒言(ざんげん)になりかねず、
御世話になった恩もあり、どこにも言うに
言えず過ごして参りまして・・・・」
「そうであったか・・・・苦労したようだな。
して、その六蔵なる御仁は今は・・・・」
「私より少し遅れて同じ石峰に仕官致しました」
「ほう、そうだったか。何よりだ。
まあ、本城でもよかったが」
 宗善は笑った。
「ともかく、他家へ行かなかったのは有難い。
石峰は西の要だ。拡大を旨とする先々を考えれば、
石峰も負担が増えぬとも限らぬ。
そこは用心して十分備えて下されよ」
「は、しかと伝えておきます」

 宗善への献上を終えた吉兵衛は、
平四郎と兵吉のいる控えの間に戻った。
「如何でしたか」
 平四郎が興味津々に聞いてきた。
 吉兵衛は軽く笑みを示して、
「上々」
 本城の控えの間であり、気を許してぺらぺらと
話し込む場ではない。
「石峰に帰ろう。修理様も満足されると思う」

 吉兵衛達は石峰城へ戻ると、城山修理に報告した。
「うむ、御苦労。どうだったかな」
「は、本丸様御後見役の梶谷左兵衛様の御嫡男、
内膳佑様に応対して頂き、資料の内容に
感心すると共に、同様の資料作りを諸城へも
指示する旨、了承願いたいとの仰せでありました」
「本城も実施か。そうであろうな・・・・他には」
「・・・・山賊討伐の件について、資料に書き残し、
当時本城にも報告したことに感謝致すと・・・・」
「・・・・そうか・・・・内膳殿の様子はどうであったか」
「は、・・・・なかなかに明朗な、気さくな印象を
受けました・・・・修理様は内膳様については何か
御存知で」
 吉兵衛が聞くと、
「うむ・・・・箕山衆として神保家と交渉する際に、
左兵衛殿の近習であったことは承知しておる・・・・
二十年程前かな・・・・言葉を交わしたわけでもないが
・・・・そうか、任される程になったか・・・・」
 と、何やら感慨深げに遠くを見た。
「それから、内膳様より、情勢は変化する故、
定期的に行う必要もあろうと仰せでありましたが、
今後の調査については如何致しましょうか」
「うむ、そうだな・・・・毎年が望ましいが、
現状では数年ごとだな。その時はまた吉兵衛に頼む」
「は、仰せのままに」

 吉兵衛は六蔵の自宅を訪ねた。
「頭(かしら)、御無沙汰しておりました」
「おお、吉兵衛か。半年ぶりじゃねえか。
上がんねぃ」
 六蔵に促されて吉兵衛が玄関から部屋に入ると、
辺りにいくつもの手甲や籠手がかさばっている。
「どうしたんですか、これは」
 吉兵衛の問いに六蔵は真ん中に座って、
「ああ、俺んとこの若い奴の籠手を直してんだ。
より頑丈にしようと思ってな、鉄板入れたり
鉄棒通したりな」
と、大きめの針で縫い物を始めた。
「で、どうした、領内を調べるのは終わったかい」
「はい、冊子にまとめて、その写本を殿と
本城へ献上しました」
「へ〜、献上か。どうだったんだ」
「大儀である、と」
「ん? それだけ?」
「まあ、そんなとこで」
「はっ、愛想ねえなぁ」
 六蔵は苦笑した。
「いや、でも、修理様はよく納得してくれたし、
評価は上々ですよ。また定期的に実施する予定です。
これも頭のおかげです」
「俺? 何かしたっけか」
「きっかけは、頭が領内をよく知るようにと
勧めたからですよ」
「あ〜、そうか。しかしそこまでやるとは
徹底してんなあ」
「あ、それから、俺も改名しましたよ。
頭もそうだったでしょ」
「おー、そうだよ、石峰六蔵忠重ってんだ。
修理様が名付け親だ。おめえは?」
「それがし、西守吉兵衛光忠にござる。
・・・・俺も修理様に頼んだら、殿に事情を話した
らしくて、光の一字を我が殿、惟光様より
一字拝領の次第」
「なんと、そりゃすげえな。よっぽど
気に入られたんだな。出世間違いねえな」
 と、六蔵は姿勢を正して、
「・・・・では、吉兵衛殿、今後のそれがしの身に
ついて、なにとぞ御贔屓の程、よろしく
お願い致します」
と一礼した。
 吉兵衛は笑って、
「いや、特に変わることもねえですよ。
今まで通りだし」
「変わんねえのか? じゃあいいか」
と、ぶっきら棒に、再び縫い物を始めた。
「・・・・頭は相変わらずだなあ」
 吉兵衛は苦笑した。


by huttonde | 2019-01-13 17:00 | 漫画ねた | Comments(0)
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